原子力安全学

 

原子力安全学-(1)
放射線と原子力の基礎およびその安全性

担当 木村逸郎

  原子力安全学は3部に分け、3名の講師がこれを担当する。簡単な放射線計測の実験および原子力発電関連施設の見学も行う。

  まず、安全学の基礎として、人類が持続的に発展し、そこで個々の人間が生活していく中で、必然的に存在する危険と危害について述べ、それらに対 抗し、その発生を防止し、また発生した場合にはその被害を減少させるための方法と手段としての安全確保の方策の概要を示す。ここで、危害の大きさと発生確 率の積で表わされるリスクの考え方を導入し、その評価、管理、連絡通報などについて概説する。

  次いで、物質とその種類(元素など)から説明し、その構成要素としての原子と原子核の構造および元素との関係を示す。また原子と原子核に関連す るエネルギーのやり取りおよび放射線の発生について述べる。さらに原子核の分裂の現象とこれに伴う大きなエネルギー(原子力)の生成について説明する。

  第3に、放射線について、その種類、測定法および各種の利用法について述べると共に、実際に身のまわりの岩石や肥料なども、わずかながら放射線 を出していることを体得するための実験を行う。さらに放射線が人体に及ぼす影響、主にこれによる障害について説明する。すなわち放射線は電離または励起作 用により人体を構成する細胞のDNAを損傷し、個体に障害を与え、さらに死亡に至らしめたり、遺伝的影響を与える恐れがある。そこで放射線を利用するため には、放射線防護に努める必要がある。ここではその概要について法的措置を含め説明する。

  次に、原子炉の原理とその危険性について述べる。そして、そうしたいくつかの危険性に対し、それぞれいかなる安全対策が取られているかについて 順次簡単に説明する。最後に原子炉の燃料を取り扱うための核燃料サイクルの概要について述べ、そこに存在する危険性とそれに対する安全対策についても順次 簡単に説明を加える。

  参考書として、日本原子力学会編「原子力がひらく世紀」を使用する。

 

 

原子力安全学-(2)
原子力発電の安全性確保のための具体的方策

担当 藤井有蔵

  まず、原子力発電の特徴および原子力発電所の建設、運転状況について説明する。続いて、地球温暖化現象やエネルギー資源の減少に伴う諸問題が顕在化してきている中で、原子力発電の持つ意義を示す。

  次に、原子力発電の安全性確保、すなわち、安全に関する基本的な考え方および設計、製造・設置、運用の各段階で行われている安全性確保のためのさまざまな技術的方策について説明する。

  原子力発電は、核分裂連鎖反応によってエネルギーを発生させる仕組みとなっているが、これを確実に制御することが基本であり、特に重要な点は核 分裂により発生する放射性物質を確実に閉じ込め、万一異常が発生しても周辺の住民の方々に危険を及ぼさないようにすることが安全確保の基本となる。

  原子力発電のシステムは、もともとこれらの危険を考慮して設計されてきており、設計段階では核分裂を確実に制御できる複数の仕組みを取り入れて いること、設備が異常を生じてもそれを検知し、安全に原子炉を停止させ、また異常が広がらないようにすること。さらに、万一異常が進展した場合でも適切に 原子炉から発生する熱を冷やし、放射性物質を確実に閉じ込める設計を行っていることを説明する。

  製作段階では、適切な材質を使用し、設計で目的とした機能を発揮できる設備を間違いなく製作するための品質管理を確実に行っている点について言及する。

  さらに運転段階では、運転および補修業務を中心として安全を確保するための適切な方法を定め、マニュアル等で明確にするとともに、運転員、補修 員等を十分訓練してマニュアルどおりに確実に対応できるようにすること、また人が介在した場合、ヒューマンエラーが異常発生の大きな要因となるため、 ヒューマンエラーの発生を防ぐための方策についても説明を行う。

  設計、製作、運転の各段階で、国、事業者、メーカーがそれぞれの立場で分担して安全確保の努力を行っている点も重要であり、これについても触れる。

  なお、2004年に発生した関西電力美浜発電所3号機の事故では配管破損により作業員の死傷事故が発生したことから、このような労働災害の発生防止への取り組みについても言及する。

  ここでは、現地に出向いての学外授業も取り入れており、発電所あるいは隣接するPRセンターに行き、実際の原子力発電所の構造や仕組みについて体得させる。

 

 

原子力安全学-(3)
原子力発電所のトラブルと事故対策・原子力防災

担当 北端琢也

  1979年に米国のスリーマイル島原子力発電所2号機で発生した事故では、ヒューマンエラーもあって加圧水型原子炉の緊急時炉心冷却系がうまく 作動せず、原子炉内の構造物が一部溶融した。環境への放射性物質の放出は極めて小さく抑えられたが、当時、観念的な想定事象と考えられていたことが現実に 発生し、住民の避難等も行われたことから、社会的にも大きな影響を与えた。わが国においては、この事故を契機として、原子力発電所等における重大な事故発 生のリスクや放射性物質が環境に放出されるリスクを確率論的安全評価手法評価し、対策を検討することが広く行われることとなった。

  1さらに、1986年には、ソ連(現在、ウクライナ)のチェルノブィル原子力発電所4号機において原子炉の損傷をともなう事故が発生した。ここ では、原子炉を格納している建物が耐圧構造を持たなかったため、事故に伴って核分裂生成物(FP)や気化した燃料の一部が長時間にわたって大気中に放出さ れ、その影響はロシアやヨーロッパ各地に及ぶこととなった。

  1講義においては、これらの事故のほか、これまで福井県下の原子力発電所等で発生したいくつかの事故およびわが国では最も深刻な原子力事故と なった茨城県のウラン加工工場で発生した臨界事故(1999年)について、事故の経緯や事故後に実施された対応策、事故の再発を防止するために取られてき た措置等について解説する。

  1また、わが国では上記臨界事故を受けて2000年に原子力災害対策特別措置法が施行され、原子力事故発生時には、中央省庁、地方自治体、医療 機関、原子力関係機関を含むわが国の防災関連機関が総合的に連携して対応する体制が整備されてきた。万一、原子力施設等の境界付近の放射線レベル等が一定 の基準(通報基準)を超えた場合には、原子力施設の責任者は、国や自治体に緊急事態が発生したことを通知する。さらに放射線のレベルが一定の基準を超えた 場合等には、国は緊急事態宣言を発出し、国や県によって対策本部が設置される。予測される被ばく線量のレベルに応じて、屋内退避、避難や汚染食物の摂取制 限などの対策が取られる。こうした原子力防災の体制について説明する。

  さらに学外授業として、担当区域内の発電所で原子力災害が発生した際に関係機関の代表や専門家が参集して情報共有や対策検討を行うオフサイトセ ンターが設置される原子力防災センター及びオフサイトセンターの活動を支援する原子力緊急時支援・研修センター福井支所を見学し、これらの施設の役割につ いて修得する。

 
 

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