環境安全学

 

環境安全学-(1)
リスクを考える

担当 高田志郎

  私の本職は、財団法人京都工場保健会という会員制の総合的な労働衛生機関において、環境保健部を担当している。主な業務は、会員事業場に赴き、 職場環境における作業環境測定を実施して、その結果等から、より適切な職場環境を維持するための指導を行うことである。また、事業場の依頼により、環境計 量(公害測定)証明事業も実施している。近年の傾向としては、職場環境と一般生活環境との境界は少しずつ撤廃されつつあり、いわゆるボーダーレス化が進ん でいる。このように、事業場においては、労働者の健康と安全を確保・増進に努めるとともに、周辺の住民に対する健康と安全をも確保することが求められてい る。

  一口に「安全」と言っても、その範囲は非常に広い。我われ人類が、人間らしく生きることができる環境状況を「安全」と定義づけ、そのための最低限の知識と行動規範(モラル)を身に付けることが学生および一般市民に求められる。

  安全に対する認識を高めるためには、我われのまわりに存在するあらゆる危険・有害要因について知る必要がある。さらには、それぞれの危険・有害要因が我われ に及ぼす影響の大きさと発生する頻度を考慮して、いわゆる「リスク」として評価することが大切となる。安全を追求することは、このリスクを未然に防止する ことである。我われは、身の回りに無数に存在する危険・有害要因から逃れることはできないことから、リスクを最小限に抑えることが必要とされる。そのため の設備・機器、技術、手法を駆使しなければならない。これらの一連の工程(手法)を、「リスクアセスメント」と呼んでおり、一般事業場においては、行政指 導というバックアップの中で積極的に導入を進めている。

  このリスクアセスメントの手法は、あらゆる専門分野に適用することがで きることから、安全学においては必須科目とする必要がある。私としては、一般的な分野におけるこれらの応用例について、対象とする学生、会社員、一般市民 別に分類し、わかりやすく講義することができると考えている。

 

 

環境安全学-(2)
GHSについて

担当 内藤勝巳

  日本の産業界では五万種類以上の化学物質が使用され、また生活の場でも様々な化学製品により支えられています。例えば、洗剤、殺虫剤や塗料など の化学製品は私たちの生活を快適・便利にするもので取り扱い上の注意や応急処置など書かれていますが、その反面、正しく取り扱わなければ、私たちの健康や 環境に悪い影響を及ぼす場合があります。

  世界的な貿易拡大を背景に、化学物質管理に対する現状では各国の化学品の危険有害性に関する分類表示が統一されておらず、その危険有害性がわか りにくい場合があります。そのため2003年7月国連は「GHS」という「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」の導入を勧告しま した。そして実施を2008年までに、APECに属している国々では、2006年までの実施を目標としております。

  「GHS」が、世界的に統一された化学物質の危険・有害性の分類・表示であるために国産品、輸入製品の危険有害性が分かりやすく、システムの導 入によって化学品による事故などを減らすことが期待されます。また、化学製品を購入する時に、人の健康や環境に配慮した製品を選択することが出来るように なります。

「GHS」導入によってその他期待される効果
① 危険有害性の情報伝達に関して国際的に理解されやすいシステムの導入によって、世界の人の健康と環境の保護が強化されます。
② 危険有害性が適正に評価・確認された化学(物質)製品の国際取引が促進されます。
③ システムを持たない国に国際的なシステムが提供されます。
④ 化学品の危険有害性試験および評価の必要性が少なくなります。

 

 

環境安全学-(3)
環境汚染化学物質への取り組みと測定技術

担当 鵜飼博彦

  人類は産業革命以来、科学技術の発展に伴って、結果的に様々な化学物質を作り、有害物質を環境中に放出し、地域的あるいは地球規模的な環境汚染 をもたらしました。これらの化学物質について、環境汚染の上で重要なポイントとなる、物質の難分解性、慢性毒性、標的臓器、毒性の強さなどをキーワードと して、主な環境汚染化学物質について、生体影響などの概要を解説します。特に、毒性の強いダイオキシン類と、人類の存亡を脅かす可能性のある内分泌攪乱化 学物質(環境ホルモン)については、その化学的特徴や毒性評価を詳細に解説するとともに、個人としてどのようにすれば、環境中のこれらの物質を低減できる か、また体内への摂取量を減らすことができるかを学習します。さらに、環境汚染化学物質のリスクアセスメント(特に化学物質の量ー反応関係)やリスクマネ ジメントの手法を解説し、排出規制や環境基準の制定、企業の環境マネジメントシステム(ISO14000)の構築など、国や社会としての環境保全対策につ いての取り組みの現状を紹介します。

  環境問題を科学としてとらえるには、環境中の物質を測定、分析することにより、数量化することが必要です。この中で、環境で取り扱う物質量は、 範囲が広く、さらに微量であることが多いために、単位(SI単位系)や基礎物理量についての理解が重要です。また、我国では測定値の精度を確保する必要性 から、測定事業所等が発行する報告書(計量証明書)は計量法の適用を受けるために、環境計量の制度について解説します。さらに、分析の国際規格である ISO/IEC17025に基づく試験所認定制度について、規格の要求事項などの概要についても解説します。また、実際の大気、水質の試料について、試料 採取から結果報告までの一連の分析の流れや、血液、尿などの生体試料中の代謝物等を分析することにより、有害物質のばく露量を推定する『生物学的モニタリング』の手法についても紹介します。

  地球環境の保全と持続可能な社会の形成のために、限られた地球資源の有効利用が重要です。そのために、エネルギーバランスなどの環境の現状評価 と将来予測が不可欠であり、その認識をもとにして、個人として、生態系に負荷をかけず、環境に優しい生活様式に改善する方法についても学習します。

 
 

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